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Amazonファーマシーはなぜピンとこないのか?—遠隔薬局の前に、まず遠隔診療が来るべきでは?

Amazonが次々と新領域に進出する中、ファーマシー事業への参入もその一つです。しかし、現状の遠隔薬局サービスには、どうにもピンとこない部分が残ります。なぜなら、医療の本質に触れる部分が欠けているからです。

 

遠隔薬局の前に遠隔診療が必要

 

薬局は医療の最終ステップに過ぎません。人が病院に行くのは、痛みや痒みなどの症状があるからです。診断を受けた上で、すぐに薬を手に入れたいというニーズが強いのは当然のことです。にもかかわらず、遠隔薬局では「翌日配送」というタイムラグが生じます。例えば、熱があって病院に行く場合、処方箋を持って近くの薬局に直行するのが一般的です。病院の隣に薬局がある場合も多く、患者は診療後すぐに薬を手に入れることができます。

 

ここで重要なのは、薬を必要とするタイミングの問題です。遠隔薬局よりも、まず遠隔診療が普及すべきではないでしょうか。診療をオンラインで済ませた上で、すぐに薬が処方され、迅速に受け取れる環境が整わなければ、Amazonファーマシーのようなサービスは医療ニーズを十分に満たすことができないと考えます。

 

生活習慣病向けの定期配送にはメリット

 

一方で、生活習慣病のように長期にわたり薬を服用する患者に対しては、Amazonファーマシーの定期配送サービスは確かに有効かもしれません。毎月同じ薬を処方される患者が、手間をかけずに薬を自宅に届けてもらえるという点では、既存の薬局と上手に棲み分けができる可能性があります。

 

しかし、そこにどれだけの市場があるのかは別問題です。特に、都市部では病院や薬局へのアクセスが良いため、Amazonファーマシーのようなサービスへのニーズは限定的でしょう。地方であれば、その利便性が高く評価されるかもしれませんが、それでも「すぐに薬が必要」という状況には対応できません。

 

結論

 

Amazonファーマシーは、医療業界に新しい選択肢を提供する可能性があるものの、現段階ではそのターゲット市場が限定的であると言えます。遠隔薬局の前に、まずは遠隔診療のインフラが整うべきです。そして、迅速に薬を手に入れることが求められる場面には対応しきれないという課題も残ります。今後の展開次第ではありますが、現状では特定のニーズにのみ応えるニッチなサービスに留まるでしょう。